車を運転中にアクセルを踏んでも加速が悪い、異音や異臭がするといった症状が現れたら、ミッション(トランスミッション)が故障しているサインかもしれません。
車におけるミッションとは、エンジンの力をタイヤに効率的に伝えるための変速機を指します。ここに不調を抱えたまま走り続けると、事故を起こしてしまうリスクが高いです。
この記事では、車のミッション故障時の症状から原因、修理費用、対処法までを詳しく解説します。
【この記事でわかること】
・車のミッションが故障した場合に現れる症状
・車のミッションが故障する原因
・車のミッションが故障した際にかかる修理・交換費用の目安
・車のミッションが故障した際の選択肢
車のミッションが故障した場合に現れる症状

ミッション(トランスミッション)が故障した際、最初に現れる主な症状は以下のとおりです。
- アクセルを踏んでも加速しにくい
- シフトチェンジした際に異音・振動がする
- 特定のギアしか使えなくなる
- 停車場所に赤や茶色のシミがある
- 焦げた匂いがする
小さな異常に思えるかもしれませんが、そのまま乗り続けると走行不能や重大事故につながるため、非常に危険です。
アクセルを踏んでも加速しにくい
走行中にアクセルを踏んでも回転数だけが上がり、車速が思うように伸びない場合、ミッション故障の代表的な症状である「ミッション滑り」が疑われます。
ミッション滑りは、エンジンが生み出した力がミッション内部で空回りし、タイヤまで正常に伝わっていない状態です。これを放置すると、加速不足によって追突事故を誘発する危険性も高まります。また、力が無駄に消費されるため、燃費が悪くなる傾向にあります。
普段よりも加速が鈍い、エンジンの回転と車速が合わない、燃費が悪くなったなどの異常を感じたら、早急に専門の工場で点検を受けましょう。
シフトチェンジした際に異音・振動がする
シフトレバーをドライブからバックに変えるなど、シフトチェンジしたときに車体がドンっと揺れたり、ガクンと揺れたりする症状は、ミッション故障のサインです。また、がりがり・こつこつと聞きなれない異音がすることもあります。
これらの異音や振動は、ミッション内部の部品が損傷しているために起きます。放置すると症状が悪化し、修理が困難になり費用も高くなるため、早めにチェックしておきましょう。
特定のギアしか使えなくなる
AT車でミッションが故障すると、車自体が故障具合を広げないために、システムが意図的に、特定ギアでしか走れないようにセーブをかけることがあります。
その場合、以下のような現象が起こり得ます。
- 1,3,5または2,4,6速でしか走れない
- 3速しか使えない
- 2,4速しか使えない
特定のギアのみでも走れるからといって長時間放置していると、不具合が車全体に広がり、結果的に修理箇所や費用の増加を招きます。
停車場所に赤や茶色のシミがある
車を止めていた場所に赤や茶色のシミが残っている場合は、ATF(オートマチックトランスミッションフルード)やミッションオイル(ギアオイル)の漏れが疑われます。
これらのオイルの役目は、ギア同士の摩擦を減らし、滑らかな変速を可能にすることです。このオイルが漏れて少なくなると、変速時のがたつきが増えたり、ギアの破損につながったりします。
オイル漏れの場所が車の中央部分であれば、ミッションのオイル漏れの可能性が高いです。
焦げた匂いがする
車内や車の周囲から何かモノが焦げたような匂いがした場合、ミッションのトラブルが考えられます。
ミッション内部のオイルの量が不足したり、オイルが劣化したりすると、潤滑性能の低下により摩擦熱が発生し、オイルが焦げたような匂いがします。
異臭を感じたらエンジンを停止し、オイルの状態を確認しましょう。
車のミッションが故障する原因
ミッション(トランスミッション)が故障する原因は、ギアチェンジの操作方法により異なります。以下の3パターンに分けて見ていきましょう。
- AT・MT共通
- AT特有
- MT特有
最初のAT・MT共通の原因に目を通したあと、所有している車のギアチェンジ方法に該当している項目を確認してください。
AT・MT共通の原因
AT・MT共通の、ミッション故障の主な原因は以下の2つです。
- 部品の寿命や経年劣化
- 負荷のかかる運転スタイル
部品の寿命や経年劣化は改善できませんが、運転スタイルは自分で注意すればミッションへの負荷を軽減できます。自分の運転が原因になっていないか確認してみましょう。
部品の寿命や経年劣化
車を構成する部品である以上、どんなに頑丈なミッションでも、時間や走行距離に応じて必ず劣化します。これが、ミッションが故障する最も一般的な原因です。
長年の使用により、内部の歯車やベアリングといった金属部品は少しずつ摩耗します。一般的に、走行距離が10万kmを超えたり、製造から10年以上が経過したりすると、こうした劣化が顕著になる傾向があります。
専門業者での定期的な点検を受け、指摘された部分の部品は確実に交換するようにし、不安を抱えずに走れるように整備しましょう。
負荷のかかる運転スタイル
日常的な運転の癖が、気付かないうちにミッションの寿命を縮めていることがあります。特に、以下のような操作は、内部の部品に大きな衝撃と負荷をかけ、摩耗を早める原因となります。
- 急発進・急加速
- 急ブレーキ
- 過度なエンジンブレーキ
- 乱暴なシフト操作
これらの運転は、ミッション内部の歯車やクラッチ(AT内部の小型クラッチ含む)といった部品に、瞬間的に設計想定を超える力を加えます。一度の操作で壊れることはありませんが、日々のダメージの蓄積が、着実にミッションの寿命を縮めます。
上記の操作をしてしまっていないか、自分の普段の運転を振り返ってみましょう。もしも該当していた場合は、負荷のかかる運転スタイルを辞め、ミッションに優しい運転を心がけてください。
AT特有の原因
AT特有の原因は、主にATF(オートマオイル:AT車に使われる専用のオイル)の不具合です。
ATFは潤滑・冷却に加えて、動力の伝達や変速を制御するための油圧作動という、ATの心臓部ともいえる重要な役割を担っています。ATFが劣化したり汚れたりすると、以下のようなAT特有の部品にダメージがおよびます。
| ソレノイドやバルブボディの不具合 | 正しく動作しなくなるとシフトチェンジの反応が遅れるだけでなく、 特定のギアに固定されたまま動かなくなる場合もある。 |
|---|---|
| トルクコンバーターの摩耗 | 加速時に滑るような感覚になり、スムーズな加速ができなくなる。 |
| 金属ベルトやプーリーの摩耗 | 摩耗した際に出る粉がオイルに混ざると、 ギアが駆動するたびに機械内部で摩擦が起き、故障の進行を加速させる。 |
ATは油圧制御と電子制御の複雑な仕組みで動いているため、一部の部品が劣化するだけでも、全体の機能に影響が及びやすいです。
ATF交換や診断機での定期的なチェックを習慣化すれば、重大トラブルを未然に防ぎ寿命を延ばす効果も期待できます。
MT特有の原因
MT特有のミッション故障は、ドライバーが直接操作するクラッチ関連の部品の摩耗が主な原因です。
MTはシンプルで頑丈とされていますが、運転方法次第で寿命が大きく変わるため、油断はできません。以下で原因の具体例を紹介します。
| クラッチディスクの摩耗 | 半クラッチの多用や急激なクラッチ操作は摩擦材を早く消耗させ、発進時のジャダー(車体がガタガタと振動する現象)や滑りを引き起こす。 |
|---|---|
| シンクロナイザーの摩耗 | 経年劣化やシフト操作が乱暴だとシンクロナイザーが摩耗し、スムーズなギアチェンジができなくなる。 ギアチェンジの際に不快な音やギアの引っかかりが生じるようになる。 |
滑らかなクラッチ操作と、定期的なオイル交換を心がけることが大切です。
車のミッションが故障した際にかかる修理・交換費用
ミッション(トランスミッション)関連の修理費は部品や作業内容によって大きく変わります。
ここでは、車のミッションが故障した際にかかる修理・交換費用の目安と費用を抑えるコツを紹介します。
修理・交換費用の目安
ミッション関連の修理費用は、メンテナンスレベルからフル交換まで幅広いです。下表は、代表的な3つの修理・交換内容と、それぞれの費用相場をまとめたものです。
| 修理・交換内容 | 費用相場(目安) | ポイント |
|---|---|---|
| ATF交換・ ストレーナー清掃 | 数千円〜3万円程度 | 軽度のメンテナンスで済み、 定期的に実施すれば寿命を延ばせる |
| シフトソレノイド/ バルブボディ交換 | 10万円〜15万円程度 | 部品単体交換なら比較的安価、 複数交換だと10万円超もある |
| クラッチ交換 (MT車) | 3〜10万円 | 交換が難しい車種の場合、 費用が高くなる可能性がある |
| ミッション本体の 交換 | 20万〜80万円以上(新品) 20万〜40万円程度(リビルト) | 負担が大きく、車の価値や使用年数によっては 買い替えを選ぶ方が合理的な場合も |
各修理・交換内容について順番に詳しく解説していきます。
ATF交換・ストレーナー清掃の費用
ATF(オートマチックトランスミッションフルード)は潤滑や冷却、油圧制御を担う重要な液体であり、劣化が進むと変速ショックやスリップ、焼き付きの原因になります。定期的な交換を怠れば内部部品の摩耗が加速し、より高額な修理が必要になりかねません。
ATF交換費用は工場やディーラーで8,000円〜3万円程度が一般的です。
同時に行うストレーナー清掃では、金属粉や汚れを取り除き、オイルラインの詰まりを予防できます。軽度の不具合であればATF交換とストレーナー清掃で改善が見込めるため、費用対効果の高い予防策です。
特にCVT(無段変速機)車はATFの状態が性能に直結するため、早めの点検・交換が安全性とコスト削減の両面で有効です。
シフトソレノイド/バルブボディ交換の費用
シフトソレノイドやバルブボディは、AT内部で油圧を制御し変速を滑らかに行うための部品です。摩耗や故障が起これば変速ショックやギアの固定、加速時のもたつきが現れます。
修理費は部品代と工賃を合わせて数万〜10万円程度が目安です。輸入車の場合は国産車よりも高額な傾向にあります。部品単体の交換で済む場合は比較的安く抑えられますが、複数のソレノイドを同時に交換するケースでは10万円を超える例も多いです。
異常が軽いうちに交換すれば走行性能を早期に回復でき、長期的には大きなコスト削減も可能です。
クラッチ交換(MT車)の費用
先述のとおり、マニュアル(MT)車でギアの入りが悪い、滑るといった症状の多くは、クラッチの摩耗が原因です。このクラッチ交換は、MT車における最も代表的な修理作業です。
費用は車種や駆動方式によって大きく変動しますが、3〜10万円程度が目安になります。部品点数の多い4WD車は、ミッションを降ろす作業が大がかりになる分、工賃も高くなる傾向があります。
ミッション本体の交換費用
ミッション本体が完全に壊れた場合、修理では対応できず、丸ごと交換が必要になります。新品の本体交換は20万〜80万円が相場で、高級車や輸入車では100万円を超えるケースも珍しくありません。
コストを抑えたい場合はリビルト品を選ぶと、5万〜10万円程度安く利用できます。リビルト品は、中古部品を分解し、消耗・劣化した部品を新品に交換して、新品同様の性能になった部品です。
より安価な中古品もありますが、耐久性や保証面でリスクが高いです。本体交換は車両価値や走行距離とのバランスを考える必要があるため、古い車両では車自体の買い替えを選択する方が合理的な場合もあります。
ミッション本体の交換が発生した際は、安易に交換作業を依頼せず、慎重に検討してください。
修理・交換費用を抑えるには
修理費を抑えるには、軽度の段階で異常に気付けることが重要です。ATF交換を定期的に行えば、摩耗や焼き付きが進みにくく高額修理を避けられます。
また、複数の整備工場で見積もりを比較すれば、工賃や部品代の差を把握できるため無駄な支出を抑えられます。
さらに、新品ではなくリビルト品や優良中古部品を選ぶのも有効です。保証が付く場合も多く安心して利用可能です。
日常点検と情報収集を行いつつ、部品の寿命を見極めながら早めの交換を心がければ、突発的なトラブルを防ぎつつ、車に乗り続けるコストを下げられます。
車のミッションが故障した際の選択肢
ミッション(トランスミッション)が故障した場合の主な選択肢は、修理をして乗り続けるか、思い切って乗り換えるかの2つです。どちらを選ぶべきなのかは、症状や費用によって判断が分かれます。
軽度の異常なら比較的低コストで改善できますが、深刻な損傷であれば本体交換が必要となり出費が膨らみます。
車の年式や走行距離、将来の使用予定も考慮しなければならないため、冷静に見極めて選択する姿勢が重要です。
| 選択肢 | 判断の目安 | 費用相場 | メリット | 注意点 |
|---|---|---|---|---|
| 修理して 乗り続けられる ケース | ATF劣化やストレーナー詰まりなど軽度の不具合 走行距離10万km未満 車両自体が比較的新しい | 数万円〜十数万円程度 | 愛着ある車を維持できる 修理費が比較的安価 今後も安心して乗れる | 重度の不具合には対応できない 長期使用で再修理が必要になる可能性 |
| 乗り換えた方が 良いケース | ミッション本体が損傷 修理費が車両価値を上回る 10年以上経過または20万km超え | 本体交換20万〜80万円以上 輸入車は100万円超の例もあり | 燃費性能や安全性能が向上 新しい車で長期的に維持費削減可能 | 初期費用が大きい 買い替えに時間や手続きが必要 |
修理して乗り続けられるケース
ミッションが軽度の不具合で済んでいる場合は、修理で十分に対応できます。部品交換や清掃で改善が期待でき、費用も数万円から十数万円程度に収まる場合が多いです。
車両自体が比較的新しく、走行距離も10万キロ未満であれば修理を選ぶメリットは大きいです。修理によって乗り慣れた車をそのまま維持でき、安心感や愛着を持って使い続けられます。
今後も長期間使用する予定がある場合には、修理を優先する方が経済的で現実的な選択です。
乗り換えた方が良いケース
先述の通り、ミッションの新品交換の費用は20万〜80万円が相場です。輸入車ではさらに高額になり、修理費用が車両価値を超える場合も珍しくありません。
ミッション本体に重大な損傷がある場合や、交換が必要と診断された場合は、乗り換えを検討する方が賢明です。
また、すでに10年以上経過した車や走行距離が10万キロを超える車では、修理した場所以外の他の部品も次々と故障するリスクが高いです。高額修理を重ねるよりも、安全性と経済性を考えて、乗り換えるほうが長期的に見て損をしにくいでしょう。
交換により、燃費性能や安全装備の進化も得られるため、新しい車に替えれば結果的に維持費削減につながります。
まとめ
車のミッション(トランスミッション)の故障は、初期症状を見逃すと、走行不能や重大事故につながる可能性があります。アクセルを踏んでも加速しない、焦げた匂いなどの症状が現れたら、迅速な対応が必要です。
故障の原因は、部品の寿命や経年劣化、負荷のかかる運転スタイルなどがあります。修理費用は軽度なATF交換で数千円から、本体交換では数十万円以上と幅広く、車の年式や走行距離を考慮した適切な判断が求められます。
定期的な点検と丁寧な運転を心がけることで、愛車を長く安全に維持できますが、修理費用が車両価値を大幅に上回る場合は、乗り換えも選択肢の1つです。
しかし、故障した車はディーラーでの下取りや中古車買取店では、価値がつかないばかりか廃車費用を請求されるケースがあります。
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